kick the base

Houdiniと、CG技術と、日々のこと。

書評: バーナード嬢曰く。

「天才だ」

そう思える漫画家はあまり多くないのですが、施川ユウキ氏は間違いなく天才肌の漫画家だと思っています。氏の作品とはじめて出会ったのは「がんばれ酢めし疑獄!!」という商業誌デビュー作品で、以来ずっと読んでいます。

  • がんばれ酢めし疑獄!!
  • もずく、ウォーキング!
  • 12月生まれの少年
  • 森のテグー
  • オンノジ
  • サナギさん

特に上記作品が素晴らしく、コマの端々からバシバシとセンスがほとばしるような、そんなマンガ達です。ひとつひとつの作品が違った味わいがあるので、今後も書評に顔を出すことがあると思います。

氏の作品はギャグマンガなのですが、明快に「ここが面白い!」と呼べる場所が少ないものも多くあります。(がんばれ酢めし疑獄!!は初期作品ということもあり比較的ぶっ飛んだわかりやすさもあるのですが)

しかし思わずにニヤけてしまうものや、「自分がなぜおもしろいと感じるのか」を見つめることで新しい発見があるような、そんな新しい視点を提示してくれるような作品が多いです。

そして上記傑作群に名を連ねるのが今回の本題である「バーナード嬢曰く。」です。

本書の主人公町田さわ子は、「本を読んだことがないのに読破したことにしたい読書家」という前代未聞な設定(果たしてそれを読書家というのか…)で、まず度肝を抜いてくれます。また彼女と双極をなす魅力的なキャラクター、SFマニアの神林しおりがいい味を出しています。

登場人物が数人しか出てこず、非常に箱庭的に物語は紡がれていきます。 展開と呼ばれるような展開はないのですが、微妙に、本当に微妙に人間関係が変化していく様も本書の魅力のひとつです。

先に「新しい視点を提示してくれるような」という表現を用いましたが、作中で語られる著者の書評がまた発見と示唆に富んでいて、実にニヤリとしてしまいます。 ぐるぐるマンガの中で少しずつ変わっていく景色の描き方は、他の作品でも見て取れることができ、本作品が気に入った方はぜひ他の作品もご一読をオススメします。

登場人物を最小限にして最大限の効果を出しているオンノジなどは、ギャグマンガの皮をかぶった哲学だとぼくは思っています。

個人的にはがんばれ酢めし疑獄!!の才気あふれるシュールな笑いをプッシュしたいところですが、他作品の成熟した魅力も素晴らしいです。

追伸

なんとこの「バーナード嬢曰く。」今年10月にアニメ化するとのこと。アニメであの面白さを表現できるのか。もしくは全く新しい見せ方をしてくれるのか。

期待と不安で胸がいっぱいですが、施川ユウキ作品がアニメ化するということは間違いなくすごいことだと思います。

すばらしいアニメ作品になってくれるよう、今から正座して待っています。