去る2017/8/5(土)に3DCG Meetup#12が開催されました。本記事は各セッションの復習をしながら会全体を振り返ってみたいと思います。
ちなみに当ブログの筆者はHoudini推しなので、各セッションの感想や知見をやたらとHoudiniに絡めた記載が出てきますがお許し下さい。
- 主催のことば
- 第1セッション リアルタイムレンダリングでのNPR表現
- 第2セッション 僕とNUKEと…
- 第3セッション で、4R8どうなのよ?
- 第4セッション 本当に無駄な仕事がしたくない人のためのHoudiniプロシージャル入門
- 懇親会
- まとめ
- 追記
主催のことば
今回は書籍「ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術」のあとがきから引用させていただき、開催の言葉とさせていただきました。
隠して価値がある技術なんて世の中にはほとんどないのだ。
ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術/平山 尚著
本書は約10年前の書籍ながら、ゲームプログラミングの基礎が網羅的にまとまったまさに定番の一冊だと思います。プログラマ・プログラマ志望でない方もあとがきだけでも得るものは多いと思うので書店で見かけたらぜひお手にとってみてください。
僕達の仕事において、最先端の技術やNDA案件など、言えない部分があるのは事実でしょう。でも、それら以外のほとんどの情報は皆に広め、切磋琢磨する時代に突入しているのではないでしょうか。誰だって最初は初学者です。先輩方の言葉や書籍に支えられ、学び、独り立ちしていきます。
本勉強会を通して共に学び、新しい分野からの刺激を与え合いながら、明日からの制作における刺激に繋がれば、主催としてこれにまさる喜びはありません。
第1セッション リアルタイムレンダリングでのNPR表現
Kurosawa(@kurosaurus)さんによるUE4でNPR(ノンフォトリアル)のセッション!
Kurosawaさんは当勉強会でも常連スピーカーであり、今回も非常に学びがあるセッションとなりました。つづく8/6(日)にも登壇を控える中、当勉強会での登壇を快く引き受けていただいたこと、この場を借りて再度お礼を申し上げます。
スライドは下記の通りです。
今回のセッションで最も重要なキーは「色も時間もUVもテクスチャもみんなおなじ」という言葉だと思います。
ぼくも今年Houdiniをはじめたことで強く意識するようになりましたが、色や時間やUVやテクスチャがそれぞれ別々に存在しているのではなく、ポイントやエッジ、面などが持っている値に過ぎないということです。
これを意識できるようになると、それぞれのデータを加工したり、転写したり、再度戻したりなどの処理をスムーズに行うことができるようになるんじゃないかなーと思います。
たとえば下記はHoudiniの簡単なシーンですが、
- transformSOPでタイムラインの回転を制御(シークバーが端まで行くと一回転)
- PointSOPで着色、Y方向のバウンディングボックスに沿ってグラデーション
- ColorSOPで上記グラデーションのカーブを調整
- ScatterSOPでポイントを散布、その際Cdアトリビュートを密度として使用
- AttributeDeleteSOPでCdアトリビュートを削除
こんなことをしています。値を渡し合い、変更しながら利用していくという考え方は、どのDCCツールやゲームエンジンを使っていても非常に有用な考え方だと思います。
セッションを振り返ると初心者向けというよりやや実践よりの内容となっていたと思いますが、難しすぎるところはあえて割愛し、初心者の混乱を抑えた非常に丁寧な内容だったと思います。
また特筆すべきは内積の説明で、数学嫌いのアーティストも思わずひざを打つ説明だったのではないでしょうか。
非常に深い学びに溢れた本セッション。UE4でNPR表現を行う際、今後何度もスライドにお世話になりそうです。
型さえ気をつければいつでもどこでもどんなデータでも使ってもいい。
この考え方ひとつでDCCツール・ゲームエンジンの可能性は大きく広がると思います。
第2セッション 僕とNUKEと…
瑞原/MatsumotoAtsuya(@Gold_of_maid)さんによるNUKEのセッション。
コンポジット作業において、AEとNUKEの比較をメインにお話いただきました。僕も含め実際にNUKEを触ったことがない人も多くおられたかと思うので、「動くNUKEを見る」という体験だけでも価値があるセッションだったかと思います。
実はこのセッションが第12回3DMUの象徴的な内容であり、また3DMU自体のテーマを具体化した内容とも言え、運営としては感慨深いものがありました。こちらについては本記事のまとめで詳しく書きます。
ぼく個人としてはNUKEの操作感はHoudiniのCOPとほとんど同じだなーという感想で、もちろん安定性や速度などNUKEのほうが良い点も多くあると思うのですが、ノードベースの時代は着実に来ているなという印象でした。
第3セッション で、4R8どうなのよ?
まーてい (@ak8gwc)さんによるZBrush4R8のセッション。
氏も3DMUの常連登壇者であり、構成・内容ともに本当に安心してお任せできるスピーカーのひとりです。普段よりAlchemyさんにてZBrushの講座を担当されていることもあり、1,500円の参加料で氏のセッションが聞けるのは破格だよなぁと常々思っています。
教える側の論理とユーザーとしての視点を共に持っている方なので、「座学で終わらない、明日から使える技術」を提供してくれる登壇者だと思っています。ときに鋭い指摘を発しながら、その裏側にソフトやその開発者、コミュニティへのリスペクトがあるから素敵ですね。
学校の講師であると同時に現役のプロであることも見逃せません。これからも良き先生、良きクリエーターでいてくださいね、まーていさん!
第4セッション 本当に無駄な仕事がしたくない人のためのHoudiniプロシージャル入門
オオトリは蒸留水(@jyouryuusui)さんのHoudiniセッション。第12回最後のセッションを飾るにふさわしい、素晴らしいセッションとなりました。
笑いあり、感嘆ありの一時間。「Houdini良さそう!」という思いを胸に帰宅された方も多かったのではないでしょうか。
Houdiniのセッションにおいて、つい主題にしがちな部分に下記が挙げられるのではないでしょうか。
- ボタン一発でこんな派手なエフェクトが!
- ダイナミクスおもしろ!
分かるよ。分かるよカイジくん。
でも、そこをグッとこらえて、「Houdiniをあつかう上でこんな考え方をするといいよ」という根幹の部分を、ユーモアを交えながらご紹介頂きました。
Houdniの同人誌をご自分で作られている氏のことですから、Houdini愛は人一倍。その氏が丁寧に構成されたセッションがつまらないわけがありません。
ぼく個人としてもHoudiniはイチオシのツールなので、今後もセッションをご用意することになるかもしれませんが、その礎となる素晴らしいセッションだったと思います。
蒸留水氏の著書はこちら
紙の本とKindle版があります。ぼくは両方持っていますが、表や図などをきれいに見たいなら製本版を、検索性能を優先するならKindle版が良いかもしれません。
- 【とらのあなWebSite】Houdini実践ハンドブックWrangle×Python Ver.2.0
- Houdini実践ハンドブックWrangle×Python | Kindleストア | Amazon
懇親会
例のごとく和気あいあいとした雰囲気の中、楽しい時間を過ごされたことと思います。はじめて参加いただいた方もおられた模様で、ぜひぜひこの機会に色々な方とお友達になっていただければと思います。
また次回以降の登壇希望も打診いただいたので運営サイドとしても嬉しい限り。
あのハイパーテクニカルアーティストやあの水陸両用妖怪のお話が聞けるかも!?
第13回を楽しみにしていてください。
まとめ
今回の3DMUは当勉強会の歴史の中ではじめて学生の登壇者が生まれた回*1となりました。
他のセッションがバリバリのプロによるものだったので、氏の緊張もすごいものだったと思います。また大勢の前での発表も慣れていないため、その負荷は想像を超えるものだったでしょう。
しかし、それゆえ当セッションを通して「みんなで疑問を解決しよう」という気持ちや「その対策知ってるよ!」という流れが生まれ、みんなで学び合うという当勉強会のモットーが実現した瞬間でもあったわけです。
「登壇者が質問して受付から回答が飛んでくる」なんて中々ないですよ(笑)
運営としても本当に、本当に嬉しかったです。最初からパーフェクトな人間なんていないですし、みんなで教え合うから絆が生まれる。それでいいしそれがいいのです。
当勉強会のモットーは下記に書いてあります。登壇、参加をご希望頂いている方は一度読んでいただけると幸いです。
3DCG勉強会を主催して -3DCG Meetupとは - kick the base
僕自身、勉強会が終わった直後は疲れ果てて「もう今回で終わりでいいんじゃないの…」となりますが、時間が経ってくると「次の3DMUのことしか考えられない!」となります。
もしかしたら第13回は大阪でやるかも!?みんなで食い倒れるぞ!
お楽しみに!!!!
追記
Togetterでまとまってるので当日の雰囲気を知りたい方はぜひ
*1:第2セッションの瑞原さんです