kick the base

Houdiniと、CG技術と、日々のこと。

これからHoudiniをはじめようと思うあなたへ

先日h_doxasさんが運営しているpodcast、normalize.fmにてインタビューを受けてきました。

doxasさん自身がWebGLの第一人者ということもあり、上記ポッドキャストはグラフィックスプログラミングやウェブ開発をテーマにしたものです。そこで延々とHoudiniを布教するという中々空気を読まない蛮行を成し遂げてきたのでご興味がある方はお耳を拝借させていただけると幸いです。

normalize.fm

一時間半に及ぶインタビューでしたがそれでもなおHoudiniの魅力は語り尽くせぬものがあり、またなによりこれからHoudiniにチャレンジしたいと思っている方に向けてのお話が漏れてしまったので、本ブログでポエムを書こうと思い筆をとりました。

未来のHoudinistのご参考になればこれにまさる喜びはありません。

目次

統合型3DCGソフトの経験は?

ひとつだけ質問です。Houdiniの前に今までに統合型3DCGソフト(DCCツールと呼ばれます)を使ったことはありますでしょうか。

経験あり

なんの問題もありません。Houdiniの扉は開かれています。さあ、SideFXの公式ページから無料体験版のHoudini Apprentice*1をDLして深淵にダイブしましょう!

www.sidefx.com

経験なし

あなたは本ポエムの対象者です。結論から言います。

Houdiniを触る前にBlender*2を学んでください。1ヶ月でもよいので。

これから上記内容の理由を書いていきますが、3DCGの学習そのものが初めて!という方はピンと来ない内容も多々あると思います。ですが、BlenderそしてHoudiniを学ぶ過程で理解できる日が来ると思います。

なぜ先にBlenderを学ぶのか

Blenderと書きましたが、一般的なDCCツールであればなんでも構いません。Maya、MODO、Cinema 4D等々、素晴らしいDCCツールは多く存在しています。その中でBlenderを名指ししたのは無料のオープンソースソフトウェアであることという理由によります。

SNSではBlenderの操作法が独特であるとか、バージョンアップが多く学習コストが高いなどの意見を見かけることがあるかと思いますが、本ポエムにおける趣旨においては全く問題がないため気にしないで大丈夫です。お好きなバージョンをDLしましょう。*3

バージョンによるホットキーの違いなどは些末な問題です。どっちみちHoudiniで上書きされるのですから(笑)

Houdiniの考え方がしっかりと身についた後にBlenderを併用するのも強力なワークフローとなるでしょう。その際に常用するバージョンを見極めていただければOKです。

閑話休題。Blenderはインストールしましたか?

ここであなたが学ぶべきことは一般的なCG制作のワークフローです。

  • オブジェクトの管理
  • エディットモードでのモデリング
  • シェーディングのコントロール
  • UV展開
  • マテリアルの設定
  • テクスチャのアサイン
  • ライティング
  • レンダリング
  • etc.etc...

学ぶことの多さに驚くことでしょう。そうです。これが3DCGの世界です。チュートリアルなどを参考に実際に手を動かしながらそれぞれの工程の意味を理解していってください。

書籍や動画などでは「UVというのはみかんの皮をむいて、テーブルに広げたものだよ」とか「テクスチャというのはその広げたみかんの皮に絵を描いて、またみかんにかぶせなおすんだよ」などの解説があるかもしれません。大切なのはこれらの一般的な(普通の)理解をすることです。

最初に「普通のコト」を「普通の考え方で理解すること」がものすごく大切になってきます。

いざHoudiniの世界へ

さて、皆さんは3DCGの基礎はすでに学ばれていますね。

  • マテリアルとテクスチャってどう違うの?
  • ノーマル(法線)の説明ってできる?
  • オブジェクトモードとエディットモード、編集するものの違いは?

これくらいな質問には答えられるようになっていると嬉しいです。ここまで来ていくつかのデータを見たときに思い浮かぶことがらを表にしてみました。見ていきましょう。

カラー
No 一般的なDCCツールのユーザー Houdinist
1 RGBで表現されてる色だな RGBで表現されてる色だな
2 RGBなので透明度はないな RGBなので透明度はないな
3 テクスチャにも利用されるな テクスチャにも利用されるな
4 3Vector型のデータだな
ウェイト
No 一般的なDCCツールのユーザー Houdinist
1 メッシュがどれだけボーンに追従するかを示しているな メッシュがどれだけボーンに追従するかを示しているな
2 float型のデータだな
面法線
No 一般的なDCCツールのユーザー Houdinist
1 面の向いている方向を示しているな 面の向いている方向を示しているな
2 3Vector型のデータだな

いかがでしょう。この表は「他のDCCツールユーザーは気が付かないことがある」と言いたいわけではなく、「Houdinistは扱うすべてのものをデータとして強く意識する」ということが伝われば幸いです。

この考え方はHoudiniだけの特権ではなく、ゲームエンジンでマテリアルを作るときにも重要な考え方なのですが、CGでユーザーが扱うモノは観念的なモノではなく計算でコントロールできる値なんだという実感があなたを自由にしてくれます。

しかしこの自由さは不自由さを経ることでしか実感することはできません。UV、法線、ウェイト、テクスチャ...一見別々なものとして理解していたそれらはすべてただのデータであり交換可能なんだ。この感覚を真に理解するにはその前に「普通の理解」が必要不可欠なのです。

地図にない街を探したいのであれば、はじめに地図が必要になるのと似ているかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。Houdiniの魅力はまだまだありますが、このポエム(怪文書とも言う)で述べたパラダイムシフトが最も重要で最も強力なものだと僕は信じています。

それでは皆さん、次はHoudinistとして再会しましょう!

*1:商用利用不可、ユーザーライセンスについては公式サイトをご確認ください

*2:後述しますが一般的なDCCツールであればなんでも良いです

*3:わからないことがあったときに調べやすいLTS(Long-term Support)バージョンを選択しても良いでしょう