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ゲーム・アニメ評: 想定科学ADV『STEINS;GATE(シュタインズゲート)』 -作品を陳腐化させるモノはなにか

今回は想定科学ADV『STEINS;GATE(シュタインズゲート)』について

ゲームに始まりアニメ・舞台などのメディアミックス作品で根強い人気を得ている本作、2009年の発売から多くの評がなされてきたことと思いますが、時間の経過した今だからこそできるゲーム評もあるかと思い筆を執りました。

本記事は作品内のロジックについての論評ではなく作品を陳腐化させる要素を考察することで、ジャンル問わずモノづくりに携わる人達に僕が思っていることを共有できればと思っています。

はじめに

始めに断っておきますが、ぼくは本作品が大好きです。ゲームも全ルートクリア、アニメも映画も何度見たかわかりません。よって以下の細かい話は愛がゆえということでご了承ください。

またネタバレは含んでいないつもりですが、踏み込んだ設定に関しても触れているので、これからゲームをやってみたい、アニメを見てみたいと思う方はぜひ本編を先に体験してください。

作品を陳腐化させるのは何か

作品は小物から古くなっていく。これは中々難しい問題ですが、我々モノづくりに携わる人間にとって避けては通れない話題です。

物語の本質とは関係なく、自然に目に入ってくる情報だからこそ違和感を感じるといった側面はあるでしょう。

たとえば「ポケベルが鳴らなくて(1993年)」という昔流行ったドラマがありますが、今聞いたら「ポケベルってなんだよwww」となりますよね。若い世代にはポケベルの説明から始めなければならないかもしれません。

そして説明から始めなければならない物語は共感から遠い立ち位置にいると言わざるをえないでしょう。

現在流行っている「LINE」も似たようなもの。他にも「Facebook」や「Twitter」などのSNSもそうです。サービスの衰退によっては5年10年経ったら古く感じるでしょう。

他には空き缶がプルトップではなくプルタブであったり、ジュースの価格が100円であったり等々。すべての陳腐化要因を作品から取り除くことはできませんが、本作品では折りたたみ式の携帯電話が重要なキーデバイスとなっているのが難しいところです。

ガラケーというガジェットを目にするたびその古さを顕著に感じてしまいます。*1

物語を楽しむ上で、これはノイズだなぁと残念に思いました。(作品のテーマ上避けられないことではあるのですが)

時事的な要素と前後関係把握の難しさ

阿万音 鈴羽(バイト戦士)は未来からやってきたため現代日本の流行が分からず、少し前に流行った「おっはー」が口癖という設定があります。

リアルタイムに作品に触れている人には分かりやすく、ライトなネタとして感覚的に理解できるギミックかと思いますが、発売から数年を経て体験した人には分かりにくいでしょう。ちなみにぼくはテレビをほとんど見ないため、特に理解するのに時間がかかりました。*2

これに関しては携帯電話の扱いと違い、もう少し上手い解決方法があったように思います。例えば「あれ?この時代は消費税3%だって聞いてたんだけど…」などとしていればどのタイミングでゲームやアニメに触れたユーザーでも理解しやすかったかもしれません。

時系列を扱ったギミックにはいつでも確認できる明確な手段が用意されているべきかと思います。

古くなりにくい作品をつくるために

物語が古くなることを完全に止めることは至難の業です。俗物的な事象を全く描かなければ可能かもしれませんが、抽象的な作品以外中々アプローチしにくいでしょう。

そこでモノづくりにおいて「できるだけ流行りものに依存しすぎない」というのはひとつの指針になるかもしれません。

「流行」は流行である以上、いつか必ず廃れるのです。

Webデザインの世界では一時期テカテカしたボタンや地面への照り返しなどがもてはやされた時代がありましたが、2016年現在に見てみるとなんとも古臭く感じるものです。それは現在流行りのマテリアルデザインなどのUI装飾表現も避けて通れない宿命でしょう。

それはWebデザインに限った話ではなく、ゲームでも映像表現でもそうでしょう。最も先鋭的な表現は時代とともに最も大きな負債となります。

それらをふまえて、足し算ではなく、ギリギリまで要素を引いていった結果、美しく古びないモノができる。

ぼくはそんな気がしています。

*1:特にゲームでは携帯電話が重要なUIになっていることもあり、「着信音の変更とかやったなぁ…(遠い目)」といった要らぬ追憶が没入感の妨げになったりしています

*2:もちろんこれに関しては特殊な例かと思いますが、本作品のターゲット層には普段テレビを見ない方々もある一定数いるのではないかと思うのですがいかがでしょうか