kick the base

Houdiniと、CG技術と、日々のこと。

Photoshopで学ぶ非破壊処理

本ブログではSubstanceスイートによる非破壊テクスチャリングワークフローなどについても取り上げていこうと思っていますが、その前に非破壊画像処理とはなんなのか?という疑問についてデザイナに馴染みの深いPhotoshopを題材にしてご説明します。

非破壊ワークフローに関するアプローチは各ソフトによって異なりますが、非破壊処理そのものの考え方自体は変わらないのでともに学んでいきましょう。

本記事は3Dのテクスチャ作成のみならず、2D系のデザイナの皆さんにも重要な考え方だと思いますのでぜひ参考としてください。

環境

  • OS X 10.11.6
  • Photoshop CC 2015.5

破壊処理

まずは非破壊処理の前に破壊処理について解説しましょう。Photoshopのオペレーションの手順を紹介し、破壊処理のメリット・デメリットを紹介しましょう。

f:id:kickbase:20161016112741g:plain

  1. 「selected range」レイヤーをcmd+クリックして円状の選択範囲を設定します
  2. 「pic」レイヤーにグラデーションツールで直接塗りを実行します
  3. cmd+Aで全選択、deleteで画像を削除します
  4. cmd+Dで選択範囲を解除、また上記を繰り返して円状の選択範囲を設定します
  5. 描画色を変更して再度グラデーションで塗りを実行します

このようにラスターデータとして直接ペイントを行うような、元画像に変更を入れるため復元が不可能になるものを破壊編集*1と言います。

直感的な操作のためペイント作業には向いていますが、再編集性が低いという難点があります。

塗りが終わった後に色を変更するにはイメージ > 色調補正を行えば可能ですが、直接ラスターデータを変更するため画像荒れなどが起こります。

非破壊処理はこれらの点をカバーし、いつでも再編集を行えるというメリットがあります。

非破壊処理

非破壊処理には色々なアプローチがありますが、今回はレイヤーマスクを利用した方法と、レイヤー効果を利用した方法について解説します。

レイヤーマスク

まずはオペレーションの前にレイヤー構造を見てみましょう。馴染みがない方もおられるかもしれないので、作りを簡単に説明しておきます。

f:id:kickbase:20161016112744j:plain

baseレイヤー

円形のシェイプレイヤーを作成します。本例ではグラデーションのベースとなるカラー#43b0ccを設定しています。

gradationレイヤー

  1. baseレイヤーを覆い尽くすサイズで四角形のシェイプレイヤーを作成します。カラーは#00ccadです。
  2. これをbaseレイヤーに対してクリッピングマスクをかけることで円形にマスキングされます。
  3. レイヤーマスクを作成し、斜め方向に白黒グラデーションをかけて完成です。

作成できたところでオペレーション動画を見ていきましょう。

f:id:kickbase:20161016112742g:plain

  1. gradationレイヤーを表示・非表示することでグラデーションのオンオフを調整できます。
  2. shift+レイヤーマスククリックでレイヤーマスク効果を外すことができます(レイヤーマスクに赤いバツが付きます)
  3. グラデーションマスクに再度グラデーションをかけることによってグラデーションのかかり具合を調整できます。またリンクを外して移動ツールを使うことによってマスク自体の移動ももちろん可能です。
  4. シェイプレイヤーなのでダブルクリックをすることでカラーの変更が可能です。「baseレイヤー」と「gradationレイヤー」が分離していることでどちらのカラーも独立して操作できるのがポイントです。

レイヤースタイル

レイヤースタイルはPhotoshopにおける非破壊処理の代表格です。

今回はグラデーションオーバーレイを利用しましょう。

f:id:kickbase:20161016112743g:plain

  1. レイヤースタイルは効果ごとに個別に表示・非表示が可能です。
  2. ダブルクリックをすることで設定にアクセスすることが可能です。
  3. パラメーター調整により様々なグラデーションが作れます。

まとめ

他にもやり方はありますが、メジャーなふたつの方法をご紹介しました。個人的にはレイヤーマスクを使用した方法がオススメです。

理由は下記の通りです。

  • グラデーションの開始・終点をシェイプレイヤーにすることによってレイヤーパネル上でカラーが視認できる
  • グラデーションカラーが独立しているため、個別に調整が可能
  • レイヤースタイルは便利な半面プロパティにアクセスするのに階層を深く潜る必要があり、オペレーションが少々煩雑

どのような方法を採用するにしても、「非破壊ワークフロー」つまり「変更に強い設計」を意識するとよいでしょう。

*1:破壊処理は不可逆処理とも呼ばれます