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Houdiniと、CG技術と、日々のこと。

映画評: エグザム

今回は映画「エグザム」について。

簡単に言うと、NARUTOの中忍試験です。森乃イビキ先生が試験官だった第1試験ですね。 もちろんまんま同じ内容ではありませんが、受験生が問題の真意を探り、合格を目指すというものです。 いわゆるソリッドシチュエーション・サスペンスになるかと思います。普通に面白かったです。

しかし、逆に言ってしまえば普通におもしろいくらいの作品をなぜブログで評するのかというと、映画開始10分間の導入が素晴らしかったからです。理想的と言ってもいい。そこを語りたくて筆を執りました。以下ネタバレ無しで行きます。

評価: ★★★☆☆

鮮やかな過去の語り口

イントロでは登場人物が自宅で試験会場に向かうための準備をしているカットが続きます。

不自然なキズが多い登場人物達。視聴者は「おいおい試験前になんでそんなにキズだらけなんだよw」と思いますが、試験会場についた直後でその答えが明かされます。

そう、最終試験にいたるまでの審査がすでに壮絶だったということ。

このことをほんの数分のイントロだけで表現しているのです。しかも台詞による説明無しで。

素晴らしい…実に映画的と言えます。

状況説明!状況説明!

すべての映画において、登場人物たちがどのような状況に置かれているかを説明することはその物語の品質を大きく左右します。

セリフを多用することなく、より映画的に。いかに自然に映画の世界観を視聴者に共有させることができるか。美術やカメラワーク・ライティング・キャストの演技、視線…すべての要素を注意深く組み立てて映画が作られていくことでしょう。

これが成功するかどうかによって、本編への感情移入度が大きく変わってきます。

本作品では「試験官が試験内容を説明する」というかたちで舞台の説明がなされます。結果的にそれは説明の域に達しておらず、受験者の混乱を引き起こす形になるのですが、それがいい。実にいい。

受験者の混乱は視聴者の混乱であり、物語の進行とシンクしてリアルタイムに同じだけの情報を得るということが重要なのです。

この「視聴者も登場人物も情報を持っていない状態からのスタート」というのはソリッドシチュエーションジャンルの特性かと思いますが、本作品では情報を持っている側(試験官)が目の前にいるが、それを得ることは許されないという状況が実に上手い。

圧倒的な情報量の違いをまじまじと感じながら、登場人物と同じ目線で物語に没入できる。

映画開始からの10分間が、この映画のキモではないでしょうか。

その後の展開はまあ…そうだよねって感じなんですが、この10分間を見るために本作をレンタルしてもいいと思えるような作品でした。

おすすめです。

※ エグザム:ファイナルアンサーという似たタイトルの映画があるようですが、そちらは別物とのことです。