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ゲーム評: スマッシュアンドマジック

皆さんお元気ですか。ぼくは毎日忙しくしています。

僕が大好きだったスマホゲーム、スマッシュアンドマジック(以降スママジと略)が2018年10月31日にサービス終了することになり、思い出を綴ると共にどうすればサービス終了を避けることができたのかについて徒然なるままに書いていきたいと思います。

UI考察: スマッシュアンドマジック。こんな記事を書くくらいですからだいぶ入れ込んでプレイしていました。

当然のことながら僕は開発・運用の内情は全くわからないので、思考実験の域は出ません。しかし、これほどハマったスマホゲームはなかなかなかったので、感謝を込めたレクイエム、もしくは次回作へのエールのようなものとしてここに記します。

ユーザーとしての立ち位置

いわゆる微課金勢と呼ばれるステータスかと思います。

目次
通算ログイン日数 277
クエスト挑戦数 12298
累計スマッシュ回数 240229
最大ヒット数 360
最大ダメージ数 161593
星5キャラ 60
ワールド ノーマル・ハード・ヘル全制覇
アモン城地下迷宮 制覇
古代遺跡ゴルドラ 制覇

これくらいの人が書いてる記事だと思ってください。要所要所で課金をしながら、隅々まで遊ばせていただきました。そして後々出てきますが重要なポイントとして、現在勇者覚醒しているキャラは1体のみということです。

勇者の証はある程度溜まっているので、運が良ければサービス終了までにあと2体覚醒いけるかな?くらいな感じです。

なぜサービス終了するのか

身も蓋もないですが、採算ラインに乗らなかったから、ということでしょう。まぁそりゃそうだって感じなのですが、SNSやYoutubeの公式チャンネルを見る限りユーザーの熱量は非常に高い。それをうまくマネタイズに繋げられなかった、もしくはそのテコ入れの方法を間違った。ということではと思います。

以降、いろいろ考えていきます。

クリティカルな施策はどこだったのか

高ARPUモデルへの転換

このモデルへの転換を象徴しているのは下記が挙げられるでしょう。

  • 勇者覚醒
  • 初期値星5キャラ

これらの採用でしょう。*1サービス開始から現在に至るまで、スママジのガチャ排出率は渋めでしたが、低レアリティキャラも戦略・戦術的にうまく使えば光る場面があるというゲームバランスのおかげで勇者覚醒が実装されるまではそこまで気になりませんでした。*2

高ARPUモデルというのはその名の通り「1ユーザーあたりの平均的売り上げ」を上げて採算ラインに乗せようという施策で、特にユーザー数の獲得が難しいオリジナルの新規タイトル(有名IPではないもの)ではこのモデルに寄りがちになる傾向にあります。

しかしその弊害として一部の廃課金ユーザーが顕在化しやすくなってしまうこと。またその一部のユーザーの声が強くなっていくこと(特にユーザーとの距離が近い運営を行っている場合難しい)。この弊害はソーシャル性が低いゲームであれば致命傷にならなかったけれど、アリーナの実装で如実に顕在化したのが大きかったのではないかと思います。(ここはアリーナの章で詳しく記載します)

売上を上げるためにテコ入れを考えた場合、高DAUモデルか高ARPUモデルを選択することになると思いますが、当時のマルチプレイのイン率などが高ARPUモデルに舵を切らざるを得なかったのは想像に難くないでしょう。

しかし実装当時、より低い排出量である初期値星5キャラしか勇者覚醒ができなかったこと、既存の高レアリティキャラの勇者覚醒化も後手後手になったことを考えると、勇者覚醒をしたければほぼ課金必須という流れはユーザー離れを加速させたと思いますし、実際ぼくのアルベルト(最高レアリティキャラ)のダブリが8とかの姿を見ると遠い目になるのはしょうがないことだったのかなと思います。

なのでせめて勇者覚醒に必要な5個の勇者ポイントを超えたら他のキャラに渡せたら…と思わずにはいられません。

アリーナシステムについて

新しい遊び味としてのアリーナシステム、心意気は素晴らしかったのですが下記問題が散見されました。

  • 廃課金ユーザーの見える化
  • オートシステムの練度不足(特に実装直後)
  • 必勝法の存在
  • 大罪キャラ(コラボ)の跋扈

特に一番萎えたのが廃課金ユーザーの見える化で、「戦略・戦術をうまくすれば強敵にも勝てる」という本来のスママジの楽しみ方と真っ向から対立するゲームシステムでした。完全オートのためユーザーのテクニックでカバーすることが出来ず、どうしても勝とうとするなら必勝法(いわゆるハメ技)的な方法しかないように思われました。

アリーナ実装当初からの必勝法は下記手法です。

  1. スクレイパーで敵を手前に引き寄せスマッシュを発動
  2. パワーアップで後発の魔法使い二人を強化
  3. マナブースト持ちの魔法使い二人で全体魔法2回でEND

現在はそこまでこの構成は見ないようになりましたが、当初はかなり見かけることがありました。*3

ここらへんを適正化するにはアリーナで構成できる覚醒キャラは2体までとか、防衛戦に勝利しても特典があるとか、いろいろな方法があるかと思いますが、高額課金者のブレーキになるような仕組みは入れにくかったのだろうなと思われます。せっかく勇者覚醒させたら全キャラパーティに組みたくなりますから。*4

どうすればよかったのか

これから書くことはジャストアイデアですし、開発コストも何も考えずに書いてます。

周回やりこみ要素に課金導線を紐付ける

妖刀ムラサメや聖剣デュランダルはマニア垂涎の超レア武器ですが、そもそもエンカウント率の低いゲッコウ低確率で落とす、という仕様のためなかなか手に入れた方も少ないかと思います。ここで、何かしらの課金アイテムを購入していればゲッコウ自体は必ず登場する、などのアイテムがあっても良かったのかなと思います。

やりこみ要素には課金要素を盛り込みたくなかったと思われますが、ユーザーの時間を課金で解決するのは至極普通の施策ですし、上記レア装備は「攻略に必要不可欠なわけではない」ので十分理解が得られたかと思います。(どれだけの層に刺さるかはわかりませんが、実装コストも低そうなので一考の余地はあったかと)

オートシステム改修

スママジのオートシステムには改善施策が入った現在でも不具合が多く、マナが溜まっていても殴りに行く、僧侶が殴りに行く、アーチャーが殴りに行く、射程範囲内なのに移動距離が短くヒットしない、などストレスが溜まる挙動が多く見られます。もちろんこれらがすべて是正され、ユーザーの操作感と同等の結果を導いてくれるAIの開発も理想のうちの一つかと思います。が、その方向性だと強いユニットはより強く、弱いユニットはより弱くなってしまうため、よりユーザー格差が可視化されやすくなります。

そこで、オートの挙動自体をユーザーがプログラマブルに設定できるシステムだったら奥深いゲーム性を提供できたのではないかと思います。カルネージハートを参考のこと。

もちろん、カルネージハートのようにゲームシステムの根底を作り変えるような大手術ではなく、簡単なルーチン・サブルーチンを組めるだけでも非常に戦略性が出て楽しかったのではなかったでしょうか。また、プログラムの基本となるチップにも課金要素をからめても面白かったかもしれません。

オートのシステムを開発側が作るのではなく、逆にユーザーに作ってもらうという発想です。スママジのオート設計、個人的にはとてもやってみたかったです。(もちろん開発コストは高いでしょうから夢物語ではあるのですが、戦略性で苦境を逆転できるのはスママジのゲーム性とも親和性が高かったのではと思います)

マルチプレイシステム・報酬見直し

スママジに限らずですが、マルチプレイはユーザー離れが可視化されやすいシステムです。またラック100キャラ以外が排斥されやすい点が初心者参入の障壁を高くしていたように思えます。

マルチプレイでは、ラックは関係なく参加者数のみで報酬獲得確率が上がるシステムにしていれば、初心者も参加しやすくなったのではと思います。また、報酬がジョブオーブ・秘伝書・常設の武器・オーブなどというのも地味であったと思います。低確率で良いので、マルチで勇者の証が手に入れられたら、過疎化を止められたのではと思います。

まとめ

サービス終了の原因を想像したり、こんな方法で回避できなかっただろうか、というような夢想を徒然に書きました。サービス終了が決まった今では後の祭であることは百も承知ですが、これだけユーザーに愛され、コンシューマーの手触りを残したスマホゲームは近年稀に見るタイトルだと思います。

1970年、人形町末廣が閉まったとき、いっぱいの客を見て「普段からこうやって来ないから潰れるんだ」と毒づいたのは立川談志師匠。開発を担当されたangoo社の次回作が出たら、もっと課金しようと思います。

最高のサービスと運営に、感謝と愛を込めて。

*1:初期値星5キャラは勇者覚醒キャラですが、厳密に同義ではないので分けて書きます

*2:開発陣のたゆまぬ努力により、バランスブレイカーとなるキャラが生まれなかったのは称賛に当たると思います

*3:ちなみに公式Youtubeチャンネルでこの方法を解説してたのはどうだったんだろう?という思いは当初ありました。「どうやっても勝てない!」とのユーザーの声があったのだとは思うのですが

*4:XFLAGスタジオ開発のファイトリーグというゲームは最高レアリティのUSキャラはデッキにひとつまでという縛りがあります。始めたばかりなので課金導線がどうなっているのか見ていきたいと思います