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Houdiniと、CG技術と、日々のこと。

Houdini : 3D&VFXセミナー@仙台で登壇してきた話

こんにちは。めんたいこです。皆さんいかがお過ごしでしょう。

私の方は光栄なことに去る2023年2月18(土)にSideFX主催の3D&VFXセミナー@仙台に参加させていただき、初心者向けの登壇をさせていただきました。

発表内容に関しての補足はありませんが、事前に頂いていた質問にお答えする時間がとれなかったため、こちらの記事をもって回答とさせていただきます。

登壇者をご指名されたものもありましたが、僕の方でも回答を用意しています

目次

VFXを制作していて楽しい瞬間

しょっぱなアレですみません。ぼくはエフェクトの人ではないんですが、TAとしての楽しい瞬間は複数の課題をひとつのクレバーな方法で解決できたときになります。(基本的に問題と解決方法というのは1対1です)

しかし、何でもかんでもひとつの解決策でどうにかしようとするとファットすぎて何がメインの用途なのかわからない、ユーザーが使いにくくメンテ効率も悪いものになりがちなので要注意です。

Houdiniと他チームがどう絡むのか、働き方について聞いてみたいです。

プロジェクトによりますが、シームレスに展開しているものが多くなってきている印象です。

特にゲームの現場ではHoudiniEngineの広がりが大きく、職種を超え「実は裏側ではHoudiniが動いている」というユースケースが増えていると感じています。

ノードのアルゴリズムの理解はどの粒度まですべきでしょうか?

ノードはプログラムで言うところの関数に当たるものなので、IOとパラメータの理解は必須となります。

内部のアルゴリズムについての理解に関しては、後々ビルトインノードを高速化したいなどのオーダーに対応する際は必要になりますが、基本は理解していなくても良いのではないかなと思います。ちゃんと使えればOKという意味で。

カプセル化の恩恵にあずかっていきましょう。

Houdiniなんでも出来過ぎ問題に直面しています。結局、どれぐらいのことが出来れば即戦力として就職やフリーランス活動が出来ますか。業界にも寄ると思いますが、大枠か業界別か、どちらかで伺えると助かります。

Houdiniなんでも出来過ぎ問題ありますよね。ぼく自身が何でもできるかどうかはおいておいて。

本項目が一番ボリュームのある回答になると思います。大きく分けて2つの回答をご用意しました。ちなみにゲーム・ノンゲーム問わずTAとしてのご回答になります。

資料作成

TA職というのは非常に適用範囲の広い職掌で、まず応募企業の求める人材像とご自身のスキルセットがマッチしていることが前提となりますが、雑にくくればTAとは問題解決の仕事になると言えます。

そしてこれは続く回答にもつながるのですが、主にTAの実務的な実績はNDAのためそのまま公開することが難しいという現実があります。ですので、僕はSNSでプライベートな研究を発表したり、Houdiniのフォーラムなどで回答を行ったりと公開できる情報を日々増やしているわけです。

ではそこで、どのように企業にアピールしているのかについて一例をあげます。

以前SideFXのフォーラムにて"Multiple ramp parameter link inside Multiparm Block, how?(Multiparmブロック内で複数のランプパラメータをリンクさせる方法は?)"という質問が上がっていました。

www.sidefx.com

こちらに僕の方で回答をしたのですが、このように問題に対する回答をシーンファイル(もしくはHDA)を添えて提出することができたら、問題解決能力の判断材料になるでしょう。

もし誰かの問題を解決したことがなかったとしても、Houdiniのネットワークというのはそれ自体が問題解決の宝庫です。

「最初に雑に組んだら上手くいかなかった」ことはありませんか?それをよく考えてうまい方法を思いつき、実装した経験は?

それがあるならばそれを「問題」と「解決法」に分けて伝えればよいのです。

チュートリアルをなんとなくトレースしている段階ではこの経験はできないので、ぜひ自身で問題解決のフローとその感覚をつかんでください。

強みをどう伝えるか

先程も書きましたが、TA職は過去の実績をそのまま公開することが難しい職掌です。なので自身の得意としている領域の話を具体的に伝えにくいという問題が出てきます。

ここで僕がよくやることは、候補から除外した選択肢から逆説的にツール・フローの解像度を伝えるという手法です。

例えば僕は基本的にプロシージャルモデリングをメインの領域としており、ダイナミクスはやらないのですが、ツール内部の処理などでもできるだけ避けるようにしています。その理由として

  1. チームでHoudini COREユーザーがいた場合スケールしにくいこと
  2. 想定するユーザー層(プロジェクト内のチーム)によってマシンスペックの差が出やすいこと
  3. 基本的にダイナミクスのパラメータは多く、ユーザーが管理するUIが煩雑化しやすいこと

などがあげられます。このように「実際には選択しない手法」を語ることで、1.チーム内でのアセットマネジメントへの意識があること2.チームのリソースに注意を払えること3.ツールを作るだけでなく、UI/UXおよびそこから派生するメンテコストが考えられることなどを伝えることができます。

この考え方は面接などで個人的に有用だと考えており、また参加するかもしれない未来のチームの反応もスタートダッシュの材料になりオススメです。

ワークスペースの配置やセカンドディスプレイの使い方などで「これいいんですよ!」ポイントがあれば教えてください。

僕は27インチWQHDディスプレイ1枚でやってます。2枚以上になると老眼で中々見えなくて…

ちなみにデスクトップはこんな感じです。ネットワークエディタを最も広くとっているかたちですね。

将来映画のワンカットを担当するようなエフェクトを作りたいのですが、初心者にはまずどのエフェクトを挑戦することをお勧めしますか?

パーティクル(POP)から始めると良いかと思います。理由としては下記のとおりです。

  • SOPレベルでの下準備がダイレクトに表現に繋がり理解しやすい
  • FluidやPyroなどと比べてセットアップがシンプル
  • PBD(Position Based Dynamics)などに応用が効きやすい

TAの仕事において需要の高い(求められている)技術や、それを調べる時に有用なソースがあれば教えていただきたいです。

中々難しい問題ですね。

例えばPythonはTAの現場ではよく用いられるスクリプト言語ですが、「Python勉強しておこう」がTAの素地とは限りません。Pythonは問題解決の手段のひとつであり、ケースによっては採用すらされません。

度々書いてきましたが、TAとは問題解決の職掌なので、基本的な素地としては「問題の言語化能力」や「解決策の洗い出し能力」、「それらを総合した対策の選定・実装能力」が必要となります。そしてこれらは当然ながら広範囲な要件ですし、経験も求められます。

僕がTAチームととして働きやすいメンバーを個人的に平たく言うのであれば「穏やかで話しやすく、理知的で建設的な会話ができる人」になります。

なのでまずはチームでなにかものづくりをし、問題点を発見・共有し、それを解決する経験を積むと良いのではと思います。(極論を言えばコードを一行も書かず運用でカバーという結論も正しいロジックがあればOKなのです)

そういう回答を求めてるんじゃねぇよ!とお叱りを受けそうですが、少なくとも現在の開発現場では再現性のあるTA育成カリキュラムもなく、効率化しなければ間に合わなかったプロジェクトを生き残った奴がTAだというイメージです。

現場からは以上です。

ゲーム開発でのHoudini活用例などお聞きしたいです!

HoudiniEngineの台頭によりゲームエンジンとの親和性がフォーカスされ、提案ベースとしても非常に導入しやすくなってきているなという印象があります。

実務でも当然使用しており、プロップをいい感じで配置しようというライトなものから背景全体をHoudiniでコントロールしようぜ!のようなヘビーなものまで様々です。

またエフェクト系の業務でも使用例が多く、特にVATまわりなどは他のDCCツールの一歩先を行っていると言えるでしょう。

これからHoudiniを学んでいくにあたってお勧めの書籍や映像教材があれば教えていただきたいです。

これがですね。あるんですよ。ものすごくいいやつが。こちらの講座です。*1

cgworld.jp

すべてのシーンは本講座用にオリジナルで作成しており、くわえて8時間x3日間という充実した時間も皆さんの理解を助けてくれるでしょう。

企画していただいたボーンデジタル様には参加者への個別サポートがおろそかにならないよう、定員は少なめに設定していただきました。(商業的な意味合いだけで言えば人数は多いほうがよいのですが、参加者個別のケアを優先しています)

なんだよ結局宣伝かよと思った諸兄もおられるかと思いますが、それほど気合の入った講座になっています。

僕はHoudini独学勢なのですが、初学者だった当時「こんな講座が欲しかった」と思うものを具現化したものになっています。

まとめ

イベント当日に新幹線の中で書きなぐったノートを振り返り、一本の記事として書きあげてみました。せっかく頂いた質問ですので、この回答が皆様のお役に立てれば幸いです。

ではでは。

*1:バチクソダイレクトマーケティングです