2016年も残りわずか。今年プレイしたゲームの中で、ベストを決める時期がやってきました。
ぼくのベストは迷うことなくINSIDE。今年はこれで決まりです。
しびれる程の美しいビジュアルが魅力の本作。頑張ってテキストで語りつくそうと思います。
例のごとくネタバレなしなので、プレイ前に読んでいただいても大丈夫。ゲーム好きなら一度はクリアしていただきたい本作です!(プレイではなくぜひクリアを!)
命の小ささ
本作の主人公である少年は、簡単に死にます。ほんとにすぐ死にます。スペランカーかよ!というくらい死にます。死んで死んで、正しいルートを探っていく、いわゆる死にゲーです。
理不尽さやストレス、製作者の作為的な誘導など感じやすいこの「死にゲー」というスタイル。ともすればデメリットになりかねないこの手法が驚くほどINSIDEというこのゲームにはマッチしています。このゲームにおいては、繰り返しデッドエンドを迎えることには意味があるのです。
非力な少年が無機質な罠になすすべもなく死んでいく、この生命に対する軽視にも似た冷めた視点が、実は本作のテーマに深く根ざしている。ゲームデザインとしてある種完成形に近いものを感じます。
世界の大きさ
画面は多くの場合引きの構図で語られます。主人公と、彼を取り巻く環境と。その圧倒的な対比に少年の心情とプレイヤーの心情がリンクします。
そしてその世界の描き方が圧巻です。張り詰めた空気感、水のゆらぎ、中を舞う埃、水中の泡…どれもこれもカリカリにチューニングされており、製作者の強い意志を感じます。
神は細部に宿るという言葉がありますが、このゲームにこそふさわしい表現ではないでしょうか。
ぼくもゲーム制作の末席を汚す人間として、彼らの姿勢には胸打たれるものがあります。
ちなみに下記スライドは制作会社PLAYDEADの中の人がゲームジャムで登壇した資料になります。専門的な資料ですが、実に学びがあるのでご興味があるかたはぜひ。
Global Game Jam 2015 - Google スライド
「わかる」と「できる」
先に述べたように本作は典型的な死にゲーです。製作者が用意したひとつのゴールへの道を探ることを求められます。もちろん、このパズル的な要素がゲームの醍醐味となるわけです。
どれくらいの比率でパズル性とアクション性が共存している状態が最も楽しいかは人によると思いますが、僕は「わかったら」、「できる」であって欲しいと思います。
アクションパズルゲームは頭のなかでひらめいたものを実際にコントローラーで動かして試しながら進んでいくものですが、わかっているのに操作が難しすぎて進めないという状態はストレスに感じます。 そういった意味で、INSIDEは本当にちょうどいい。「あ!こうすれば行けるんじゃないかな?」と思って手を動かすと、ストンとクリアできる。そのバランスが絶妙です。
前作のLIMBOは比較的アクション性が高く、アクションゲームが得意でないと詰まる場面がいくつか見受けられました。「難しいなぁ」くらいであれば良いのですが、アクションパズルゲームにおいて避けなければならないのは「操作が難しいがゆえに正しいルートなのに断念してしまうこと」ではないでしょうか。
基本的に一本道のゲームなのですから、手がかりが見つかったら素直に次の扉を開いてあげるほうがよいと僕は思います。
訓練とゲームシステム
何度も言いますが本作は死にゲーです(しつこい)。死にゲーをもう少し深く考えると、ゲーム内のデッドエンドフラグを学んでいき、それを回避していくシステムとも言えます。
本作には物語が大きく動く場面がふたつありますが、そのひとつはこの繰り返し学んでいった「死の要因」を覆すことによって推進していきます。
ネタバレしないようにぼかして書きますが、ある場面で「あ、このパターンは死んだな」と思ったときに何かが起こるのです。
ゲームというインタラクティブなメディアならではの表現に、ぼくは完全にやられました。
ゲームと自由
昨今ではオープンワールドを好きなように駆け巡り、ゲーム内の様々なサブゲームに興じながら進めていくゲームも多いことと思います。しかし、そういうユーザーができることが単純に多いことだけがゲームにおける自由ではない、ぼくはそう考えます。
INSIDEは一本道のゲームです。左右の移動とジャンプ・アクションボタン。それくらいしかできることはありません。
しかし、非常に自由を感じます。
画面のデザインによることも大きいと思いますが、INSIDEという一つの大きな世界の中で、小さな少年を操作する。インタラクションが発生するアイテムを探し、それをどう使うか考える。その操作は驚くほど自由に満ちています。
ユーザーに対するインタラクションの提供方法はゲームにより様々ですが、自由さを演出しにくいアクションパズルゲームの中で本作はひときわ異彩を放つ白眉と言えるでしょう。
前作からの成長
ぼくのまわりには前作LIMBOの方が好きという人も多く、その理由もうなずけるところがあります。世界観とアートの見せ方は好みが別れるところでしょう。ゲームシステムはほぼ同等です。
しかしぼくがINSIDEに軍配を上げる点は、テンポの良さです。
LIMBOは死にモーションが長い。
これは死にゲーにとって減点対象です。試行錯誤の結果として数多くの死を体験するにあたって、ひとつひとつの死を重く演出する必要はない。僕はそう思います。
Unityの可能性
これは完全に開発者視点ですが、本作はゲームエンジンとしてUnityを採用しています。しかしまあこの出来栄え。
僕の知ってるUnityと違う…!
いいゲームに触れるとモチベーションが上がりますね。ぼくももっと頑張らねば…
まとめ
テキストだけで表現しようと思っていましたが、やはりそこはゲーム。せっかくなので公式サイトでプレイ画面を見てください。この世界観にピンときたら、ぜひ購入をおすすめします!